第61回北上みちのく芸能まつり(1日目)

3年ぶりに開催された北上みちのく芸能まつり。

北上みちのく芸能まつりは、岩手県内外の芸能団体(例年だと100以上!)が北上市内のあちこちで熱い公演を繰り広げる日本最大級の芸能フェスです。その始まりは昭和37年、現在の専修大学北上高校の校庭で開催された「みちのく郷土芸能まつり」で、当時は20団体ほどの出演でしたが、会場や日程など様々な試行錯誤を重ねながら年々その規模は大きくなり、やがて岩手を代表するまつりのひとつに成長しました。民俗芸能を観光資源として活用するとともに、その保存継承にも大きな役割を果たしているといえます。

そして本来なら昨年、みちのく芸能まつりは記念すべき60回の節目を迎えるはずでしたが、コロナ禍で2年連続の中止……ですので今回の開催は長らく待ち望まれたものでした。本番が近づくにつれますます感染は拡大し、中止となるイベントが相次ぎましたが、そんな中でも規模縮小や感染対策の徹底により、なんとか開催まで漕ぎつけました。

まつりを楽しみにしている出演団体の皆様の様子からも、この日が特別な日なんだなというのが伝わってきました。民俗芸能は本来、供養や祈りのためのものであって見せ物ではないのかもしれませんが、多くの人に見てもらう機会があるというのも、伝承活動の大きな原動力なのだと思います。

さて前置きが長くなりましたが、まつり1日目の様子をお伝えします。

目次

さくらホール(小ホール)神楽公演

本来だと昼間は詩歌の森や諏訪神社などでの公演もあるのですが、縮小開催の今年はさくらホールのみ。それでも大ホールと小ホール同時進行で公演が行われていて悩ましいところ……まずは小ホールで神楽を観ることにしました。

川端岳神楽「権現舞」

今回最初に観た芸能がこちら。その名のとおり岳神楽系統の神楽から伝わった神楽で、文政7年から200年近い歴史があるとのことです。まずは子どもたちの下舞から。

川端岳神楽 の写真

下舞って本来は権現舞の舞手が行うものですが、こうして別で舞うのは継承を目的として他の舞手にも出番を与えるため、という解説があり、なるほどと思いました。この中から未来の舞手が育つと良いなぁ……

川端岳神楽 の写真

そして権現舞です。

川端岳神楽 の写真

テンポ良い歯打ちがあったかと思うと、舞手と権現様がにらみ合いながら(?)ジリジリと移動する場面もありこれもめちゃめちゃかっこよかった。緩急。

川端岳神楽 の写真

解説では「モモタ舞」という、新築祈祷などでしか披露されない貴重な舞について触れられました。いつか観てみたいなと思ったのですが、まさかこの後、夕方のおまつり広場で偶然観ることになるとは……

成田神楽「山の神」

こちらも早池峰岳系の神楽です。赤い吽面の大山祇命による舞、後半で面を外して激しく舞いますが白ザイで表情が見えないのがまた神秘的でかっこいい。

成田神楽 の写真
成田神楽 の写真
成田神楽 の写真
成田神楽 の写真

成田神楽さんは再来年(2024年)に舞初めから200年の節目を迎えるそうです(解説の中では来年とのことでしたが、団体公式では2024年と書いてあって、これはたぶんいつから数えるかの違いかと)。記念公演とかあるんでしょうか、楽しみです。

早池峰岳流更木神楽「裏岩戸開き」

早池峰岳流更木神楽さんの「裏岩戸開き」。裏舞としては天鈿女命の巫女舞が入るのが特徴のようです。美しい。後半の4柱の華やかな舞も好きです。

早池峰岳流更木神楽 の写真
早池峰岳流更木神楽 の写真
早池峰岳流更木神楽 の写真
早池峰岳流更木神楽 の写真
早池峰岳流更木神楽 の写真

更木神楽さん、例年8月6日は雷神社の宵宮で奉納されていて、つまり今日この日……ちょうどおまつり広場で芸能公演がある時間と重なっています。実質第11会場みたいなものではないですか。悩ましい……

早池峰嶽流綾内神楽「八幡舞」

続いて綾内神楽さん。大正4年に口内町の水押神楽から権現舞を習得、火防祭などで舞われていましたが一時中断し、石鳩岡神楽から再伝授され昭和60年に発足した団体です。

熟練の舞手による八幡舞。息のそろった美しい舞はもちろんですが、力強い反閇が印象的。ステージの継ぎ目の金具がぴょこぴょこ飛び跳ねて外れるほどでした。間近でこの迫力を堪能できて満足です。

早池峰嶽流綾内神楽 の写真
早池峰嶽流綾内神楽 の写真
早池峰嶽流綾内神楽 の写真

これにて午前の部は終了。この小ホールで午後は大乗神楽の公演が行われ、午前の岳系統の神楽と比較しての解説が期待できそうなので魅力的……ですが、県外の気になる団体があったため悩んだ末に大ホールへ向かうこととしました。

さくらホール(大ホール)芸能公演

中野七頭舞

中野七頭舞のみなさん、みち芸の常連です。軽快なお囃子とともに大勢でステージに登場する姿は何度見ても壮観で、なぜか目頭が熱くなります……

中野七頭舞 の写真
中野七頭舞 の写真
中野七頭舞 の写真
中野七頭舞 の写真

脚が高く上がってかっこいい。相当ハードな芸能なのにそれを感じさせずみなさん楽しそうなのが本当に良い。大好きです。

中野七頭舞 の写真
中野七頭舞 の写真
中野七頭舞 の写真
中野七頭舞 の写真
中野七頭舞 の写真
中野七頭舞 の写真

大槌虎舞

大槌虎舞は大槌町内の虎舞4団体の総称で、交流や技術向上のため共に活動しているそうです。今回はそのうち城山、向川原、陸中弁天の3団体の合同です。

大槌虎舞 の写真
大槌虎舞 の写真
大槌虎舞 の写真
大槌虎舞 の写真

虎頭で視界が十分でないはずなのにステージ端ギリギリまで一気に笹を押して走り、見ていてドキドキしました。

大槌虎舞 の写真

迫力ある姿を見せたかと思うと猫みたいに可愛かったり、その表現力に脱帽です。

鮫神楽

青森・八戸からお越しの鮫神楽さんです。墓獅子で有名だし、あまりお目にかかる機会のない青森の芸能なので観てみよう、くらいの気持ちで観たらめちゃめちゃ素晴らしくて虜になってしまった……

まずこれは「剣舞」。刀と鞘と開扇を両手に持ち激しく舞う曲芸的な演目です。前のめりになって回転したりして体幹すご……

鮫神楽 の写真
鮫神楽 の写真

そして同じ舞手さんが着替えて次の演目「五条橋千人切」へ。ちなみにこの変身の間の会長さんの繋ぎのMCも面白かったです。この演目大好きですという愛が溢れていて、期待が高まります……そしてその期待をもはるかに超えるクオリティだったのです。

鮫神楽 の写真
鮫神楽 の写真

下駄と笛で登場する牛若丸に会場がざわつくのを感じました。

鮫神楽 の写真
鮫神楽 の写真

牛若がほんと牛若牛若してるし弁慶との身長差含め非常に見映えがします。この麗しさと身のこなし、創作物で描かれるような姿が現実に目の前に現れた感動たるや……

鮫神楽 の写真
鮫神楽 の写真

もはや扇で戦う姿にすら謎の説得力を感じます。

鮫神楽 の写真
鮫神楽 の写真
鮫神楽 の写真

今回この演目を選んだのは義経ゆかりの岩手だからということだそうで、嬉しくなりますね。そして後で知ったのですが、この弁慶と牛若は小学校からの友達なんだそうです。なんだその裏設定は!(設定ではない)

鵜鳥神楽

普代村から鵜鳥神楽さんです。まず「清祓」。伊邪那岐命が桃の枝などを持って舞う祓い清めの演目です。

鵜鳥神楽 の写真
鵜鳥神楽 の写真

神楽って通常はもっと小さな舞台で舞われるものですが、この大ホールで1人の舞でもこれだけの迫力で魅せるのはすごいなと思いました。

鵜鳥神楽 の写真

続いて恵比須舞。始まるときに鯛を持ちたい人は手をあげてくださいとアナウンスがあり、かねてから持ってみたかったのですが勇気が出ず……結局見送りました。表情豊か(に見える)な恵比須様が素敵でした。

鵜鳥神楽 の写真
鵜鳥神楽 の写真

請戸の田植踊

ずっと拝見したかった、福島県浪江町からお越しの請戸の田植踊のみなさん。

岩手にも様々な田植踊がありますがそれらとの一番の違いは唄だと思いました。終始素敵な唄声にあわせて踊られる姿は美しく感動的でした。衣装も華やかで、早乙女(でいいのかな?)のちっちゃい女の子が特に可愛らしいけど踊りはしっかりして立派。扇を持つ方々(才蔵?)の衣装は左右の向きで違ったデザインに見えて面白い。

田植踊がある限り故郷はなくならない、という想いで活動される姿に、民俗芸能の真髄のようなものを感じました……いつか絶対浪江へ観に行きたいです。

請戸の田植踊 の写真
請戸の田植踊 の写真
請戸の田植踊 の写真
請戸の田植踊 の写真
請戸の田植踊 の写真

岩崎鬼剣舞・岩崎伝京都鬼剣舞・岩崎伝佐渡鬼剣舞

岩崎鬼剣舞, 岩崎伝京都鬼剣舞, 岩崎伝佐渡鬼剣舞 の写真

鬼剣舞の元祖とされる岩崎鬼剣舞と、そこから印可の証を受けた岩崎伝京都鬼剣舞、岩崎伝佐渡鬼剣舞との合同演舞です。

岩崎鬼剣舞, 岩崎伝京都鬼剣舞, 岩崎伝佐渡鬼剣舞 の写真
岩崎鬼剣舞, 岩崎伝京都鬼剣舞, 岩崎伝佐渡鬼剣舞 の写真
岩崎鬼剣舞, 岩崎伝京都鬼剣舞, 岩崎伝佐渡鬼剣舞 の写真
岩崎鬼剣舞, 岩崎伝京都鬼剣舞, 岩崎伝佐渡鬼剣舞 の写真
岩崎鬼剣舞, 岩崎伝京都鬼剣舞, 岩崎伝佐渡鬼剣舞 の写真

北上を代表する民俗芸能としてみちのく芸能まつりを牽引してきた鬼剣舞。同じ踊り・同じ装束の3団体が一斉に踊る姿は圧巻でした。県外の踊り組がこうして久々に集結できたことが何より嬉しいですね。大ホールのラストにふさわしい演舞だったと思います。

おまつり広場芸能公演

夕暮れの北上駅前大通り。ここでまもなく芸能公演が始まります。そろそろどの団体を観るか腹をくくらなければならないので、いちばんソワソワする時間です……その前に市民パレードがあり、28年ぶりに「小鳥崎さんさ」のパレードが復活・お披露目されました。

 の写真
 の写真

目当ての会場まで裏道を移動しようとしたら大槌虎舞のみなさんに遭遇。にぎやかなお囃子で練り歩いていました。

大槌町虎舞協議会 の写真

三本柳さんさ踊り

おまつり広場で最初に観たのが三本柳さんさ踊りのみなさん。実を言うとこの数分前まで遠くの会場にいたのですが、やっぱり観たくなって大移動……この前盛岡さんさで観たばかりなのに。せっかくなので普段あまり観てない芸能を観るぞ! と心に決めていた自分はどこへ……でもやっぱり良い。何本柳でもいけてしまう魅力。

三本柳さんさ踊り の写真
三本柳さんさ踊り の写真
三本柳さんさ踊り の写真
三本柳さんさ踊り の写真
三本柳さんさ踊り の写真
三本柳さんさ踊り の写真
三本柳さんさ踊り の写真
三本柳さんさ踊り の写真
三本柳さんさ踊り の写真
三本柳さんさ踊り の写真

鮫神楽

そして三本柳さんさの隣の会場に、昼のホール公演で感動した鮫神楽さん。気になって途中から観に行きました。ちょうどあの牛若が三番叟を舞っているところでした。美しい舞に西日を受けて輝く姿がますます神々しかった。14演目を伝承しているそうなのでいつか遠征して他にも色々拝見したいです。

鮫神楽 の写真
鮫神楽 の写真
鮫神楽 の写真

請戸の田植踊

そしてあまりにも節操がないのですが……請戸の田植踊をやっぱりまた観たくなって走りました。

こんなにぎやかな中でも唄声が優しく響いていて、たくさんの観客に囲まれて踊るみなさんは輝いて見えました。

請戸の田植踊 の写真
請戸の田植踊 の写真
請戸の田植踊 の写真

門岡念仏剣舞

この時間帯が一番悩むところだったのですが、門岡念仏剣舞さんを選びました。国見山極楽寺ゆかりのこの芸能を観るとみちのく芸能まつりだ! と実感するし、いま私が関わっている衣川の剣舞とも共通点が多く、たくさん観ておきたいなと。

門岡念仏剣舞 の写真
門岡念仏剣舞 の写真
門岡念仏剣舞 の写真
門岡念仏剣舞 の写真
門岡念仏剣舞 の写真
門岡念仏剣舞 の写真
門岡念仏剣舞 の写真
門岡念仏剣舞 の写真
門岡念仏剣舞 の写真

ここは浮気せずに最後までじっくり鑑賞しました。でも終わってから気がついたのですが、こんなに色々観てるのに今日ひとつも鹿踊を観ていない! おまつり広場ほんとに難しい……

神楽「権現舞」大群舞

伊勢流門屋太神楽

そして権現舞大群舞の時間。せっかくなので普段あまり観ていない芸能を、という当初の計画をここで思い出し、伊勢流門屋太神楽さんを観ました(旗には「大神楽」表記でしたが正式はどちらなんでしょうか?)。お囃子含めみなさん渋かっこよくて素敵。子供の頃こういう獅子はなんだか怖いと思ってたのですが今みると可愛い顔してますね。

伊勢流門屋太神楽 の写真
伊勢流門屋太神楽 の写真
伊勢流門屋太神楽 の写真
伊勢流門屋太神楽 の写真

川端岳神楽

どこかもう一団体観たいな、と思いながら会場を移動していると、変わったお囃子が聞こえてきて、ふと見ると昼にホールで観た川端岳神楽さん。こ、これって「モモタ」と呼ばれる舞では!?

川端岳神楽 の写真

モモタは新築祈祷の限られた場面でしか披露されない貴重な舞とのことだったので、まさかこのおまつり広場でさりげなく舞われているとは夢にも思いませんでした。権現様が柄杓をなかなか離してくれず舞手が悪戦苦闘する面白い舞です。もう終わる頃だったので一瞬でしたが拝めてよかったです……

こういうのことがあるのでおまつり広場、まったく油断できません。

鬼剣舞大群舞

いよいよ最後のセッション。縮小開催なのでいつもより早い時間です……もう終わってしまうのかと思うと寂しくもなりますが、鬼たちがぞろぞろ集結する光景は壮観。推し団体を夢中で追いかける方の姿もあり鬼剣舞人気を実感しました。

 の写真
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飯豊鬼剣舞

めちゃめちゃ悩みつつ第1会場へ移動し、これまでなぜかあまり観たことがなかった飯豊鬼剣舞さんを観ることにしました。これだけ多いと意識しないと同じ団体ばかり観てしまうんですよね……

若い方が多い印象で初参加の女性もいたそうです。みなさんかっこよかった。特徴的な身ごろの模様も好きです。端っこの会場なのでぐるりと半円状の人だかりができて盛り上がってました。

飯豊鬼剣舞 の写真
飯豊鬼剣舞 の写真
飯豊鬼剣舞 の写真
飯豊鬼剣舞 の写真
飯豊鬼剣舞 の写真
飯豊鬼剣舞 の写真
飯豊鬼剣舞 の写真

これにてみちのく芸能まつり1日目は終了。本来は夜中までめくるめく芸能の競演が続くのですが、短縮ということでもうほんとあっという間……終了後もそれぞれの会場で観客やご出演の皆様が名残惜しそうに言葉を交わしていました。

それでも結果的にどれを観るか大いに悩んだりしながらたくさんの芸能に触れることができ、あらためてこれはとんでもないまつりだぞ、と思いました。どうしてこの団体とこの団体の会場がこんなに離れてるんだ! と嘆いたりもしましたが、きっと人気の芸能を分散させて多くの団体が人々の目に留まるように工夫したのでしょう。制限のある中での開催でしたが、そこかしこに主催者の民俗芸能愛を感じたプログラムでした。ご出演の皆様や関係者の皆様には本当に感謝です。そしてまた、県外など遠くからお越しの芸能ファンの方も多くいらっしゃったようで、私はそれがとても嬉しかったです。

 の写真

来年ここでまた、盛大にまつりが開催されることを祈ります!

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