「三陸国際芸術祭2022 彩」のイベントのひとつとして大船渡市防災観光交流センター(おおふなぽーと)で開催された「三陸篝火芸能彩」に行ってきました。時間の関係で観れたのは第一部の途中までですが、その様子をお伝えします。
その名のとおり屋外広場の篝火のなかで芸能を鑑賞するイベントなのですが、開始直前から降り出した雨により、会場をピロティーに移してスタートしました。
菅窪鹿踊・剣舞
まず田野畑村から菅窪鹿踊・剣舞のみなさんです。「ほらがえし」という演目だそうです。
その名が示すとおり鹿踊と剣舞が一緒になっているのですが、同時に踊るのではなく、鹿踊の後に衣装を早替りして剣舞を踊ります。珍しい芸能ですが田野畑だけでなく宮城県の鹿踊でもみられるスタイルのようです(川前鹿踊・剣舞など。いつか観てみたい……)。
ただ、もうひとつの大きな特徴がこの写実的な鹿っぽいシシガシラです。多くのシシオドリは権現型や竜頭型といわれるような鹿とはかけ離れた頭をもちますが、この菅窪鹿踊は比較的鹿に近い見た目をしていて、愛媛・宇和島の鹿踊(八ツ鹿踊り)に似ています。その宇和島の鹿踊も仙台藩から伝わったそうなのですが、仙台の鹿踊はこういう鹿っぽい頭ではなく権現型です。菅窪鹿踊の伝承経路ははっきりしていませんが、宇和島の鹿踊のような頭と、仙台の鹿踊のように剣舞に早替りするスタイル……何か関係があるのでしょうか。
ここからは剣舞の部分で、「大念仏」という演目だそうです。といっても、なんだか剣舞というより七ツ踊っぽいなという感想。お囃子も中野七頭舞とか黒森神楽を思わせる雰囲気をもっています。ちょっと動画で観てみましょう。
どうでしょうか、めちゃめちゃ似てると思うのですが……
そして七ツ踊のように様々な道具を持った踊り手が出てくるのですが、面白いのがこれ。まるで駒踊ではないですか!
鹿踊から剣舞に早替りしたかと思ったら七ツ踊のようで、駒踊的な要素もある……菅窪鹿踊・剣舞は単純にカテゴライズできない興味深い芸能だなと思いました。
牛伏念仏剣舞
こちらは宮古の牛伏念仏剣舞さんで、「高舘」「ヒムクリ」「太刀」と3演目を披露。閉伊頼基が戦没将士の慰霊のため将士27名に踊らせたのが始まりといわれる剣舞だそうですが、この剣舞にも平泉・高舘を題材にした演目があるのですね。
沿岸北部にみられる仮面をつけない鎧剣舞ですが、太刀や薙刀などを激しく交差させる踊りは迫力がありました。もしかしたら面がないからこそできる身軽な動きというのもあるのかも。
見ていてとても気になったのが、装束の胸や大口にある家紋。統一されているわけでなく各々違っていて、役割によるものなのか、それとも踊り手によるものなのか……大口の絵柄も様々で面白いです。
鵜鳥神楽
続いて普代村の鵜鳥神楽さんです。ここで雨も止んできて、会場が屋外ステージに戻りました。アナウンスによると少し前まで虹も出ていたそうです。準備の間に周りの人たちの会話が聞こえてきたのですが、遠くからいらしている方も多いようで嬉しくなりました。
恵比寿舞を篝火のなかで観るというのもなかなかない経験で良いですね。
ただ、用事があったため残念ながらこの演目の途中でタイムアップ。お囃子に後ろ髪を引かれながら会場を後にしました。この後も3時間ほど公演が続きましたがたいへん盛り上がったようで何よりです。